「ちぃ、おはよ。……昨日のことは気にしないでね」

「沙耶佳ちゃん、おはよう。別に気にしてなんかないよ〜」


翌朝、学校の玄関でばったり遭遇したのは沙耶佳ちゃん。

私はお得意の、だらしない笑顔で沙耶佳ちゃんと向き合う。


やだなー…。こんな顔で沙耶佳ちゃんと話せないよ。


今の私、嫌な顔してると思うもん。表情は笑ってるけど、心は不細工を極めている。最低だ。


それは、昨日の夕方から胸がモヤモヤして、涙が出るほど苦しかったから。

私は出口の見えない迷宮に入ったまま、帰り方がわからなくなっている。

ぎゅっと苦しい胸を押さえて作った笑顔と、明るい声も偽りだ。


全部ニセモノ──…


「ほんとにね、私気にしてないから」

「え!?でも…ちぃって小鳥遊くんのこと、好きなんでしょ?」

「小鳥遊くんは……」


ただの友達だよね?