さよならの前に抱きしめて

こんなときって、なにを話せばいいのかわかんないよ。沈黙は苦手なのに、会話〜〜!!


「あ!ななせ先輩。マフラーはどうですか?」


慌てた私は、視界の端に飛び込んだマフラーを手に取り、ななせ先輩の胸元にずい、と押し当てた。

雪のように真っ白で、柄もない無地のマフラー。
男の子に渡すには少し可愛すぎるかもしれない。
私ってば、なにをしてるんだろう。空回りもいいとこだ。

「調子のりすぎました。ごめんなさい」と、心の中で謝罪する。


「え!ムリムリ!マフラーなんか編めないし」


と、ななせ先輩は押し付けたマフラーを私に戻す。


「編むんじゃなくて買う方なんですけど」

「………」


「へへ」と、笑い混じりに答えると、ななせ先輩は頬を膨らませた。

耳の先まで赤らんでいるのは、はじめて見たんだ。

学校の女の子たちが憧れる、ななせ先輩の新しい一面を発見してしまった。


う、うわ〜〜。天然な、ななせ先輩可愛いなあ。


まじまじと観察してしまう。

口元が緩んで笑みがこぼれていたら、近くから私の名前を呼ばれた。