「そうなんだ。てっきり千早の彼女かと思った」
「違います!クラスメイトです!」
自分でもびっくりするほど、素早い返事と大きな声。言い終わった後で「なんで必死になってるの!?」と、体が熱くなった。
ななせ先輩にウソついてるみたいになっちゃった。
「千早のこと好き?」
「……それは、」
「わたしは好きな人いるよ。はい、これでおあいこね」
「ずるいです」
「千夏ちゃんて可愛いね」
言葉に詰まる私は、これが精一杯の返事で。
小鳥遊くんのことが『好き』だとか、真っ直ぐに聞かれると曖昧な答えで誤魔化すしか方法がみつからなかった。
沙耶佳ちゃんと乙葉ちゃんに聞かれたら、きっと私はすぐさま「違うよ」って、だらしなく笑いながら言うんだろうなあ。
まだ恋を知らない『好き』と、ふわふわした甘いお菓子の味がする気持ちの真ん中にいるみたい。



