「やっぱり英語は苦手だなあ」と、胸中で文句を垂れ流しながら、唇をシャーペンで二回突いた。
そして視線を向けた先で、隣の席に座る小鳥遊くんを横目で捕まえた。


毎月恒例の席替え。
十二月から新しい席で隣になった、小鳥遊千早(たかなしちはや)くん。


私、都倉千夏(とくらちなつ)一七歳の、まあるい瞳に映る小鳥遊くんの姿は、新鮮だった。


まあるくて小さい輪郭、透き通るような陶器の肌に、くっきり二重の大きな瞳、長い睫毛。
クラスの女の子たちが『かっこいい』って、口を揃えるのも仕方ない。みんなが“欲しいもの”を全部持ってるんだもん。


英語の授業なんて誰も真面目に聞いてないし、机の下でスマホ触ってる子いるのに、小鳥遊くんだけはちゃんと先生の話しを聞いて、ノート写してる。


それに…ミルクティ色の柔らかい髪が太陽の光に反射して綺麗──