昨日の甘い余韻に胸がドキドキして、寝不足になっている私は、目を擦りながら、どうにか教室を目指して重たい足を進ませる。


う〜〜〜寒すぎる。学校終わったら、すぐにみゃーのところ行こう。
今日は、新しいご飯買ったの食べてほしいし、小鳥遊くんも……。


──ここで俺が世話してるの秘密ね


だっ、ダメダメ!邪念はあっちにいって!


気を抜いた瞬間、小鳥遊くんのことが浮かんでしまう自分があまりにも恥ずかしくて、目の前の教室に向かって、大きな歩幅を踏んだとき、


「わっ!」

「ご、ごめんなさい」


誰かと肩がぶつかって、声が小さく重なった。
やけに大人っぽい声が降ってきて一気に目が覚める。


「ななせ先輩」

「え?」


思った言葉が、ぽろっと落ちて、咄嗟に両手で口を覆ったけど言ったあと。


ななせ先輩は私のことなんか知らないのに、私は、ななせ先輩のことを知っているなんて、とっても変だ。