あたしは、自分の上から水が落ちてくるのを感じた。



……響夜の涙だった。

大切に思ってくれてたのが伝わってきて胸が死んじゃいそうに痛かった。

痛い…。

こんなに痛いなんて思わなかった。

大切な人を傷つけるのがこんなにつらいなんて知らなかった。

あたしは記憶をなくしたことできっとたくさん人を傷つけた。

自分は痛みなんか知らなくて、被害者ぶってた。

あたしは自分の情けなさに人を傷つけてやっと気づいた。

あたしは、響夜を一度だけギュッと抱きしめてこう言うしかなかった。

「響夜…。大切にしてくれてありがとう。大切なことに気づかせてくれてありがとう。幸せになって…。」

あたしは無理矢理響夜の腕をほどいて家に走って帰った。