送ってもらうことにしたのはいい。
 まずは一歩踏み出せた。
 むしろ私、よくがんばりました!

 けれど、『話し足りない』と言った以上は何か話題を……と考えたものの、何も見つからない。
 そのせいで、無言で見つめ合う時間ができてしまって、それがとてつもなく気恥ずかしい。

「あー、じゃあ、店出よっか?」

 そう言ってくれた光汰のほうまで、ぎこちないように感じるのは気のせい?

「そ、そうだね」

 私たちはそれきり黙って出入り口に向かう。

 とにかく何でもいいから、話せることはない?
 さっきまではどうして話せてたんだっけ⁉︎

 焦れば焦るほど、頭は働かなくなる──

 しかし幸いなことに、店外へ出ると、光汰のほうから話を再開してくれた。

「そういえば、紗羅もすっかり銀星台に慣れたよなー」
「うん、そうだね」

 するりと肯定の言葉がでてきた。
 だって、1年間過ごした月ヶ丘よりもずっとのびのびと過ごしている。