「あーあ、水曜かあ。つまんなーい。紗羅もそう思わない?」

 瑞希の『紗羅』呼びは、すっかり定着している。
 もちろん私のほうも『瑞希』と呼んでいる。

 『クラスも部活も一緒で、お互いの名前を1日に何度も呼ぶのに、いちいち“ちゃん付け”しなくてもよくない?』ということになって。
 呼び捨てし合うのに、抵抗は少しも感じなかった。
 むしろそっちのほうが自然だった。
 私たちはそれほど親しくなっていた。

「部活ない日って、暇だよね。図書室で本でも借りて帰ろっかな?」
「えっ⁉︎ 瑞希って読書もするの?」
「まあね。『文武両道』って言ってちょうだい」
「わあ、銀星台の鑑!」
「でしょ、でしょ。ね、紗羅も一緒に行かない?」

 すごく行ってみたい気がした。
 銀星台の図書室で本を借りたことは、まだ1度もなかった。
 それと、瑞希がどんな本を読むのかにも興味を引かれた。

 けれど、断った。

「行きたいけど、今日は用事があって……」
「そっかあ。じゃあ、また次の機会にでも行こうよ」
「うん、ありがとう」