光汰は私を見つめたまま、空に向かって真っ直ぐに手を上げた。

「先生、代打は月野宮にします!」
「えっ!?」

 私は周囲を見回した。
 月野宮なんて、そうそうある苗字ではないから、私のことなのは分かっていたけれど、そうせずにはいられなかった。

 安永先生も驚いて心配そうに言った。

「『月野宮』って……新星、本気で言ってるのか?」
「もちろんです。紗羅、やれるよな?」
「おいおい……」

 光汰は先生を無視して、私に挑戦的に問いかけてきた。

「ギリギリの人数で紅白戦やってんだけど、ついさっき手首痛めたのがいるんだ。もう7回で最後の打席になるから、頼むよ。それとも、まさか元・第二小の月野宮が自信ないとか?」

 自信なんて、あるわけないじゃない!
 小学校以来のソフトボール。
 ブランクがあるし、何より相手は男子……
 だけど、そこまで言われて、スゴスゴと退散するのはあまりにも悔しい。