「手土産は?」
「ここよ。ヴィンテージワインと無添加のフルーツジュース、それから日持ちのする焼き菓子も用意したわ」
「十分だろう」

 休日にも拘らず、お父さんとお母さんはバタバタしていた。
 これから出かけるのだ。
 
「お姉ちゃんは受験生なんだから無理しなくてもいいのよ?」
「無理なんてしてないよ。新星さんの家でバーベキューは久しぶりだし、」

 お母さんにそう答えたお姉ちゃんは、とても機嫌がいい。

「それに楽しくなりそう」

 私のほうを横目で見てきた。
 
 以前の私なら、言葉通りにしか受け取らなかったと思う。
 でも、お姉ちゃんという人を知った今は、その含みに気づく。

 お姉ちゃんの期待に応えられるかどうかは分からない。
 でも、これからやろうとしていることは、少なくとも私には必要なこと。

 初期計画に比べて、なんだか派手な舞台になってしまったけれど、土壇場で怖気づいたりはしないと決めた。
 絶対にやり遂げてみせる! と気合いを入れた。