「今日も図書館行こうと思うんだけど、よかったら紗羅も行かない?」
「ごめん!」

 瑞希が私との約束を覚えてくれていて、わざわざ声をかけてくれたっていうのに……

 顔の前で手を合わせて謝る。

「そんなに気にしないでもいいってば」
「来週、来週こそ行く!」
「おっけー。じゃあね」

 瑞希は最後まで軽く返事をしてくれた。

 それでも肩の力は抜けない。
 むしろ、ここからだ。

 光汰はさっきからこっちを気にしている。

 声をかけようと息を吸い込んで、私の心拍数はマックスになる。

「ええっと、今からいい?」
「いいけど」

 光汰はカクカクと頷く。
 光汰のほうも緊張しているのだ。
 期待と不安と……
 その両方が瞳に混じっている。

 私が何について話すつもりなのか、見当がついているに違いなかった。
 恐らくは、『水曜日の放課後に話したいことがある』と告げたときから。