最強乙女と無敵ヤンキー



 「聞いたか?あの星野いちごってやつ」

 「聞いた、聞いた。メチャクチャ喧嘩が強いらしいじゃん」

 「ってことはあの女に勝ったら俺もメチャクチャ強いってことじゃね?」

 「でも、全然強そうには見えないよな」



 転校してきてから1週間。校内では私の話で持ちきりだ。あっちこっちで噂が飛び交ってる。

 平和な学校生活を送るはずが、まったく程遠いんですけど!?どういうこと?納得するしかないけど、納得出来ない。

 

 あれから何度か襲撃に遭い、更に3人の退学者を出してる。自分の所為で相手が退学になるのは、あまり気分の良いものじゃない。

 それでも喧嘩のお誘いは止まない。



 困ったなー。いっそ私の方が辞めようかな。叶うなら地元に戻ってじっちゃんの家に住ませてもらいたい。ここじゃなく前の穏やかなアホ校に戻りたい。


 だけど、弟と妹のことを思うと無理だ。あの子たちはまだ小さい。

 晩御飯だったり、学校のことだったり、幼稚園のお迎えだったり。度々、帰宅が遅くなりがちな忙しい両親に代わって私が面倒を見ている部分が多々ある。


 そこら辺、嫌いじゃないし、お小遣いは貰えるし、弟たちも素直でいい子だし、不満はまったくないんだけども。学校だけはなー。


 高校だけは出て欲しいとお父さん達からも重々言われてるし、辞めずに頑張りたいところ。しかし、そう思ってる私が退学に追い込んでしまってるなんて皮肉。


 せめて大人しくしててくれればいいんだけど。今日だって3回も襲撃を受けたし、厳しい。躱すだけで精一杯。