「分かりました。その場所に案内してください」
「あざっす!」
男子生徒が私を誘導するように歩き出す。連れて行かれたのは3年1組の教室だ。廊下にギャラリーが集まって凄いことになってる。
教室の中を覗けばグレさんと相手の男子生徒しか居なかった。皆、巻き込まれるのは勘弁なんだろう。相当暴れたみたいで机や椅子がムチャクチャになってる。
「すみません……。グレさん。本当にすみません」
床に倒れた男子は既に降参をしてる。しかし、グレさんは許すつもりがないらしく胸ぐらを掴んでる。
「誰が女みたいな顔だって?」
「違うんすっ。ほんと口の文ってやつで……」
グレさんが襟ぐりを掴まれ、されるがままにグッタリと首を後方に垂らす男子生徒。早く止めてあげねば。これ以上は危ない。
「落ち着いてください。グレさん」
教室の中に足を踏み入れ、グレさんの背中に声を掛ける。グレさんは男子生徒の胸ぐらを掴んだままギロリと殺意に満ちた瞳をコチラに向けた。
怒りに染まった美青年の破壊力。綺麗な顔が絶対零度の温度を放ってる。不満げに目を細められ、一瞬だけ狼狽えてしまった。平和な学校生活のために負けてる暇はないんだけども。
「邪魔すんじゃねぇ……」
「ダメです。邪魔するのが私の役目なんで」
「は?」
掴んでいた男子生徒を離し、グレさんは眉間に皺を寄せてゆっくり立ち上がった。ふらりとコチラに足を向けて近づいてくる。



