【マンガシナリオ】シークレット・ラブ。


〇部屋で寝ている琴夏(朝方)

(琴夏の夢の中)


北星「……なぁ、俺がお前のこと好きって言ったら……どうする?」


琴夏「(どういうこと?なんで、急に)」


夢の中で琴夏と北星は2人きり。北星の部屋で見つめられ、突然好きと言われ戸惑う琴夏。夢の中だということに気づかず、頬を赤らめながら北星を見つめる。



北星「俺たち“偽の恋人”としてやってきたけど、やっぱり……幼なじみとしか見てない?」


寂しそうに微笑む北星。そんな北星を見たのは初めてで、琴夏は黙り込む。


琴夏「(そんなこと言われても……好きとかよくわかんない。でも、北星といるのは……嫌いじゃない)」


ドキドキと高まる心臓。北星に自分の気持ちを話そうとする。


琴夏「北星、あのねっ……」


北星「俺は、ずっとお前のことが……」


声を出そうとする琴夏に被さるように話す北星。そのせいで上手く聞き取れず、何を言ってるのか分からなかった。


気づいたら北星の顔が琴夏の目の前にあって……キスをしていた。琴夏のくちびるに柔らかい北星のくちびるが当たり甘いキスをしている。


琴夏「(……な、何……一体何が起こってるの!?)」


ドキドキしながら、琴夏は北星のキスを受け入れていた。


(夢のシーン終わり)


〇琴夏の部屋の中


琴夏「うわぁぁぁ!私、なんて夢見てるの!?」


夢の中のシーンが頭の中に鮮明に残っていて赤面しながら飛び起きる琴夏。琴夏の叫び声が部屋に響いた。


まだドキドキ鳴る心臓を抑えながら時計を見ると時刻は午前六時。目覚ましがなる前に飛び起きていた。


琴夏「ほ、北星と、キ、キスなんて……」


北星と琴夏が偽の恋人として振る舞うこと早2ヶ月が経とうとしていた。最近は楓和も大人しく、北星への告白の数もぐんと減った。


相変わらずスキンシップの多い北星は琴夏にベタ惚れだが琴夏はその気持ちに気づいていない。


琴夏「はぁ……」


恥ずかしい夢を見てしまい思い切りため息を着く琴夏。それと同時に琴夏のスマホが震えた。


琴夏「ひゃあ!今度は何!?」


琴夏はスマホのバイブ音でも驚く。スマホを手に取ると北星からメッセージが届いていた。


スマホのメッセージ(北星から)


『悪い。今日テスト前最後の朝練あるから先いくな。遅刻するなよ』


ぶっきらぼうだけどどこか優しさのあるメッセージに琴夏は読んだだけでドキッとする。


バスケ部はたまに朝練あるので琴夏はそのことに慣れていたがこうしてメッセージをくれたのは初めてだった。


琴夏「遅刻しないよ……バカ」


なんだかメッセージが愛おしくなり恥ずかしそうにつぶやく琴夏。琴夏は夢のことを忘れ、朝の支度に取り掛かった。


〇昼休み、教室


北星「琴夏、わりー。今日部活のミーティングしながら昼飯食うことなった。だから一緒にいれないわ」


琴夏「そうなの?頑張ってね」


教科書類を片付けていると琴夏に話しかける北星。迅のことがあって、昼休みは北星と一緒に過ごすことが多くなった。


だけど今日はなんだか忙しいらしく、珍しく北星から断られる。


由奈「おふたりさん、ラブラブだね」


北星の姿を見送っていると由奈がニヤニヤと笑いながら琴夏に話しかける。


琴夏「いやいや、北星が過保護なだけだよ。今日はミーティングあるんだって」


由奈の言葉に苦笑いな琴夏。琴夏は由奈のからかいに慣れてきていた。


由奈「そうなの?今、大会前だからね。尚更忙しいよね」


夏休みに開かれる大会に向けて運動部はみんな張り切って練習している。レギュラーの北星はほかのみんなより忙しそうに回っていた。


琴夏「そうみたい。北星もレギュラーだから頑張ってるみたいだけど、最近疲れてるみたいなの」


北星は元気そうに振舞っていたが琴夏は北星のちょっとした変化に気づいていた。頑張りすぎる北星を心配していた。


由奈「そうなんだ。琴夏も高比良くんのことよく見てるね。なんだかんだ恋人も上手くいってるみたいだしね」


琴夏「……まぁ、ね。幼なじみでずっとみてきたっていうのもあるけど……」


そこまで言いかけて琴夏は黙りこみ、今朝見た夢を思い出す。北星に好きかどうか聞かれたことを思い出し、ふと自分はどう思ってるのか分からなくなっていた。


琴夏「(北星は異性として見ていなかったけど……。友達とも違う。じゃあ北星への気持ちってなんだろ)」


由奈「琴夏?急に黙ってどうしたの?」


黙り込む琴夏を不思議に思った由奈は顔を覗き込む。


琴夏「ああ、なんでもない。お昼一緒に食べよ」


琴夏は考えていたことを振り払うと由奈と一緒にお弁当を広げ始める。琴夏の気持ちが徐々に変化していくのがわかった。


〇体育館、バスケ部部室(北星side)


キャプテン「じゃあ、これでミーティングは終わる。ここで飯食べてっていいし、教室戻ってもいいぞー」


部室にキャプテンの声が響、バスケ部解散となった。意外とミーティングが早く終わったので各々教室に戻ったり昼食を広げたりしていた。


北星は琴夏に会いたいという思いがあったため教室に戻ろうとする。


迅「おい、北星。今日ここで食べないのか?」


教室に戻ろうとする北星を止める迅。迅は昼食を手に持ったまま立っていた。


北星「ああ、悪い、今日は戻る」


迅「戻るって……。小鳥遊さんの元に?」


迅は北星を引き留めながら確信を着いてくる。迅から琴夏の名前を聞いて止まる北星。北星は迅の気持ちに気づいていたため警戒していた。


北星「そうだ。悪いか?お前、琴夏に変なことしてないだろうな?」


冗談交じりに話しているが北星の目は笑っていない。北星の琴夏への想いは本気ということが伝わる。


迅「変なことって……人聞き悪いな。この前一緒にテスト勉強したくらいで、あとは何も無いよ」


そんな北星の気持ちを知ってか知らずか、サラッと過去のことを話す迅。


北星「……は?どういうことだ?聞いてないぞ」


迅「言ってないもん。あ、もしかして小鳥遊さんからも聞いてない?だとしたら申し訳ないね」


北星はみるみるうちにいらだちが湧き上がる。迅はこの状況を楽しみ、北星に迫る。


そんな迅の胸ぐらを北星が掴んだ。


北星「うるせぇよ。俺の琴夏に手ぇ出すな。琴夏に近づくな」


不穏な様子に鼻で笑う迅。


迅「“俺の”、ねぇ……。お前ら、“本当に恋人?”」


北星「どういうことだ?」


いらだちがMAXになる北星は迅に迫る。不穏な様子が部室に広がり、部活の仲間はちらっと2人を見ている。


迅「どういうことって言われても……」


キャプテン「ストーップ。お前ら、部室で喧嘩するのはやめろ。大事な大会前だ。少しはレギュラーという自覚もて」


止まらない2人に割って入ったのはキャプテンだった。キャプテンは2人の頭にげんこつを落とす。


キャプテンはイライラしながら2人を引き剥がし、そう忠告した。


迅、北星「「すみません」」


キャプテンに勝てない2人は素直に謝るが北星は迅と目を合わせようとしない。


キャプテン「……はぁ。喧嘩するなら他でやれ」


キャプテンは2人を部室から追い出した。北星は迅を人睨みすると教室に戻って行った。


〇放課後、帰り道(琴夏sideに戻る)


いつも通り北星と琴夏は並んで一緒に帰っている。だが北星は何やら怒っている様子で何も話そうとしない。


琴夏、北星「「……」」


琴夏も北星の違和感を覚えながらも黙り込む。


琴夏「(……北星、なんか機嫌悪い?なんでだろう。昼休み終わる頃から黙りっぱなしだよ)」


黙り込む北星を気にしながらも隣で小さく歩く琴夏。チラチラと顔を見ながら機嫌を伺っていると北星は急に立ち止まった。


北星「……なぁ」


琴夏「は、はい!」


北星にぶつかりそうになるも琴夏は反射的に返事をする。琴夏はドキドキしながら次の言葉を待った。


北星「琴夏、俺に隠してることないか?」


琴夏「え?」


イライラしているのかいつもより低い声でそう尋ねる北星。琴夏はわけがわからず北星を見つめることしか出来なかった。


北星「……聞いてる?」


北星は迅から聞いたことを気にしていて、琴夏に真相を確かめようとしている。が、鈍感な琴夏は何も言わない。


琴夏「き、聞いてるけど……別に、隠してることは……」


北星「……はぁ。琴夏、本当に鈍感だよな」


琴夏「はぁ!?」


北星のため息とともに出た言葉に琴夏は切れる。


琴夏「さっきからなんなのよ!北星、なんかおかしいよ!?言いたいことあるならちゃんと言ってくれなきゃ分からないよ!」


琴夏の声は思いのほか大きかったらしく、北星はその声を聞いて驚く。大人しい琴夏が怒るのはほとんど初めてみた北星。


北星「じゃあ、なんで迅と出かけた事黙ってたんだよ!今日迅から聞いた。なんですぐに話さなかった?」


琴夏「……別に言わなくても良くない?吉村くんはたまたまあって、勉強教えて貰っていただけだよ。勝手に怒らないで!」


北星「お前、俺と恋人だって言う自覚あるのか!?俺が琴夏の彼氏だからな!」


負けじと言い返す琴夏に顔を近づけて話す北星。あまりの迫力に琴夏は息を飲んだ。


琴夏「(北星……なんでこんなに真剣なの?もしかして、夢のことが現実に……!?)」


今朝変な夢を見たせいかパニック状態になる琴夏。


琴夏「こ、恋人って言っても“ニセモノ”でしょ……?」


ジリジリ迫る北星に目を逸らしながら答える琴夏。北星と琴夏は口喧嘩したのはこれが初めてだった。


北星「……“今は”、な?」


琴夏「……へ?」


しばらくの沈黙の後、ぼそっと北星がつぶやく。琴夏は意味がわからず聞き返したがそれ以上は何もなかった。


北星はため息をつくとそそくさと歩き始める。琴夏はその場に取り残された。


琴夏「(……どういうつもり……?)」


さっきまで怒っていたはずが、北星からの言葉で頭がいっぱいになる琴夏。その後、北星と琴夏は気まずいまま家に帰った。