【マンガシナリオ】シークレット・ラブ。


〇昼休み、購買の前


由奈「ごめんね〜。私、お弁当忘れちゃって。買い物付き合ってくれてありがとう!」


琴夏「いいよ!私もちょうど飲み物買いたかったし!」


琴夏と由奈は昼ごはんを買いに購買に来ていた。由奈は申し訳なさそうに謝るが琴夏は気にしていない。


久しぶりにくる購買に少しワクワクしていた。


吉村迅「あれ?小鳥遊さんと蓮見さんだ!久しぶりだな」


2人話していると突然後ろから声をかけられる。振り向くとそこには別のクラスの吉村迅がいた。彼は北星の友人で一年生の頃同じクラスメイトだった。


琴夏「吉村くん!久しぶりだね!クラス変わってから全然会わないね」


久しぶりの迅の登場に目を輝かせる琴夏。由奈も笑いながら手を上げる。


由奈「おー!元気だった?今日は高比良くんと一緒じゃないの?」


迅と北星は同じバスケ部。クラスが別れても2人は仲が良く、常につるんでいた。昼休みはいつも教室を出て迅の元へ行く北星だが、今は隣にいなかった。


迅「あー、なんか用事あるって言われて。今日は1人」


由奈「そうなんだ。じゃあさ、良かったら私たちとお昼一緒しない?私買ってくるから待っててよ」


迅「いいの?」


琴夏「いいよー!久しぶり話したかったし!北星がいないなら、一緒に食べようよ!」


由奈の提案に乗る琴夏。迅は申し訳なさそうだがふたりと昼休みを一緒にすることに。由奈がご飯を買いに行ってる間、迅と琴夏は話し出す。


迅「……小鳥遊さん、今北星と付き合ってるって?」


琴夏「へぁ!?ど、どうしたの、突然……」


突然の話に驚く琴夏。迅はニヤニヤしながら琴夏に詰め寄った。


迅「噂、広がってるぞ?まぁ、幼なじみだから付き合ってもおかしくないと思っていたが……とうとうアイツの想いが通じたのか」


楽しそうに話していたがだんだんと寂しそうに微笑む迅。その様子に気づかない琴夏は顔を真っ赤に染めており、話を聞いていなかった。


迅「……小鳥遊さん?聞いてます?」


あまりにも反応がない琴夏にヒラヒラと手を振る迅。それにハッと意識を取り戻す琴夏。


琴夏「ご、ごめんね。まさか吉村くんも知ってるなんて」


迅の言葉に琴夏は苦笑い。本当は偽の恋人同士だというのに、なんか申し訳なくなる。琴夏は迅にだけは知らせておこうと口を開いた。


琴夏「あ、あのね……北星とは、その……」


迅「……ん?」


周りの騒がしい音にかき消されそうになる琴夏の声。それを聞こうと迅は琴夏に近づく。


琴夏「……その……北星とは……むぐぅ!?」


北星「ストーップ。迅、琴夏から離れろ。近すぎ」


琴夏「もごもご!?(北星!?)」


偽の恋人だと話そうとした瞬間、横から手が伸び琴夏の口を塞ぐ北星が現れた。琴夏を抱きしめ、迅を無理やり琴夏から引き離す。


突然の北星の登場に驚く琴夏と迅。


迅「ふはっ!独占欲丸出しだな。お前、神出鬼没だろ」


北星の嫉妬心に笑い出す迅。迅は笑っているが北星を見る目は睨んでいた。


北星「うるせぇ。琴夏に近づくな」


ぎろっと北星は迅を睨む。


由奈「お待たせ〜。ごめん、予想以上に混んでてさ。って、これはいったいどういう状況!?」


ふたりが睨んでいると由奈が帰ってくる。北星がいること、琴夏が抱きしめられていること、ふたりが睨み合っていることに驚きながら立ち止まった。


北星「悪い。琴夏は俺が貰う。迅、後で話あるから」


琴夏「ちょ、ちょっと……!」


由奈「ありゃ〜。こじらせた愛は怖いわね」


北星は琴夏を引きずるようにして2人から離した。それを見た由奈は苦笑いしていた。


〇空き教室の中、2人きり


琴夏「北星……?どうしたのよ」


空き教室に連れ込まれた琴夏は黙り込む北星を覗き込む。訳が分からない琴夏は北星の気持ちに気づかずキョトン顔。


北星「お前……もしかして、迅に俺たちの関係バラそうとしたか?」


琴夏「え?まぁ……。吉村くんなら話した方がいいかと思って。なんか騙してるみたいで嫌じゃん?」


琴夏は迅とは友達だと思っている。だが、北星は琴葉への気持ちに気づいていた。琴夏の鈍感さにため息を着く北星。


北星「……はぁ。そんなことだろうかと思ったが……ここまで琴夏は馬鹿だとは思わなかったな」


琴夏「なっ……バ、バカとは何よ!バカっていう方が馬鹿なのよ?北星に言われたく……ひゃ!」


北星の言葉にムカついた琴夏は反論するけど突然距離を詰める北星に言葉を飲み込む。あまりの近さに息をするのも忘れる琴夏。


琴夏の心臓の音が大きくなり、北星から視線を外すことが出来ない。あまりにも真剣な北星の視線に釘付けになっていた。


北星「俺たちの関係を迅に話すのはキンシ。いいか?誰にも言うんじゃないぞ?」


北星はグイッと顔を琴夏の元へ近づけるとそう囁く。その仕草が自然すぎて琴夏は顔を真っ赤に染める。


琴夏「(吉村くんに話しちゃいけないって……なんでだろ)」


不思議に思う琴夏だったが北星に逆らうことはできずそのまま頷いた。頭の中がプチパニック状態で何も考えられない琴夏。


北星「……よし。いい子。俺との約束、守れよ?」


北星はそんな琴夏に満足し、琴夏の頭を優しく撫でる。笑いながら北星は小指を差し出し、琴夏との小指と指切りをする。


この空間には甘い雰囲気が漂っていた。



琴夏「……北星、どうしちゃったの?」


突然かっこよく見えた琴夏は混乱するあまりそう呟いた。だけど北星は笑うだけで何も答えない。


北星「別に?昼休み終わる前にご飯食べろ」


話をはぐらかされた。北星は手に持っていた菓子パンをとると食べ始める。まるで今までの出来事がなかったかのように振る舞う北星。


そんな北星の姿に戸惑う琴夏だった。


〇ある日の休日、図書館


琴夏は数日後に控えた定期テストに向けて街にある図書館で勉強している。北星も誘ったが用事があるらしく、断られていた。


琴夏「……はぁー。分からない」


琴夏は自分の苦手な数学と格闘していた。たまに北星に聞いたり由奈に聞いたりして勉強していた。


琴夏がひとりで勉強すると効率が悪く、分からない問題ばかりが募っていく。周りは定期テストを控えているのか、学生らしき人が多くいた。


迅「……あれ?小鳥遊さん?」


分からない問題に頭を抱えていると迅に声をかけられた。


琴夏「え?なんでここに?」


目の前に現れた人物に驚く琴夏。


迅「小鳥遊さんこそ。もしかしてテスト勉強?北星と来てるの?」


琴夏「北星は用事あるって断られたの。ひとりでテスト勉強してたけど分からない問題だらけで」


小声で話す琴夏は苦笑い。迅はさりげなく琴夏の横に座る。そのことに驚いたが何も言わなかった琴夏。


迅「そうなんだ?じゃあ僕が教えてあげるよ」


琴夏「本当!?吉村くんに教えて貰ったら百人力だね!頼りにしてます!」


迅は頭が良く成績は学年でトップ5に入るほどの秀才。北星と並んでモテる人物でもある。


優秀なのに運動神経も抜群。見た目はちょっとチャラいが琴夏は迅を信用仕切っていた。


迅「あはは!そんなに困ってたの?どの問題?」


急に礼儀正しくなる琴夏に笑い飛ばす迅。


琴夏「(吉村くんと久しぶりに会ったけどやっぱ可愛いな〜。こんな可愛い人と北星が友達なんて……最初はびっくりしたっけ)」


琴夏はちらっと迅を盗み見る。チャラい見た目とは裏腹に真面目に教える迅。そのギャップに琴夏は楽しんでいた。


迅「小鳥遊さん、聞いてる?」


琴夏「あ、ご、ごめん。なんだっけ?」


ぼーっとしているといつの間にか迅の顔が近くにあり驚く琴夏。だけど迅はそんな琴夏を見て楽しんでいた。


迅「そんなに僕のこと好きなの?」


琴夏「……へ?」


耳元で囁くような声で聞かれ素っ頓狂な声を出す琴夏。質問の意味がわからずぱちくりさせるだけだった。


そんな琴夏にさらに迫る迅。


琴夏「(あ、あれ?吉村くんってこんな感じだっけ?前はもっと距離感あったような……どうしたんだろ)」


顔を真っ赤にして口をパクパクする琴夏は傍から見ても動揺しているのがわかる。


迅「……そんな困らないでよ。僕じゃ、ドキドキしないかぁ」


琴夏「えっ、えっ……?」


恋に鈍感な琴夏は迅に言われていることがさっぱり分からない。2人は図書館にいることを忘れ、お互い見つめ合う。


琴夏「……あの……、ここ、図書館……」


緊張と混乱で蚊の鳴くような声で話す琴夏は今にも消えてしまいそう。ようやく図書館にいた事を思い出し、迅に話す。


迅「うん。……まぁ、今日はこのくらいにしておくか。北星のやつ、これは苦労するな」


琴夏の反応を見て苦笑いする迅だったがそのことに気づいていない琴夏。微妙な空気が流れた。


迅「じゃあ続きやろうか」


琴夏「う、うん」


戸惑う琴夏を他所に通常通りに振る舞う迅。その様子に驚きながらも勉強を再開させたのだった。