ないものねだり



あの時の強張った顔は、殴られると分かっているのに、

幼い私が怖がらないように作った、強がりな顔だったんだと、

中学生になった私は分かった気がする…。



案の定私は、ご飯を炊く大釜の蓋で頭を殴られた。


鉄の鈍い音と殴られた痛みで目が回った…。

”こんなことが日常茶飯事なんだろうな”…っと思いながら、

体制を整えて、


「ごめんなさい。すぐします。」


っと朝食の用意を早々に進めた。

他の子たちはというと、大抵見て見ぬふり。

他の先生が目の当たりにしても、


「黒木先生は一生懸命だから~」


と、肯定する。

”ここは腐っている”と、

本来なら楽しみな中学生活が不安になった。