ないものねだり


昨日借りて返せなかった教科書。

3人で一緒に考えた手紙。

たった1行の ”昨日と同じ場所でまってるね”

その2つを持って敦に渡しにいった。


バレるのは怖かったけど、好奇心と少しの反抗。

バレた後のことなんてその時は考えてなかった。

ただただ自分を好きになってくれる人がいたことが嬉しかった。


放課後が近づくに連れ、心臓の鼓動も早くなる。


”なんて言おう……”


呼び出すのはいいものの、どう切り出せばいいのかも分からない。

6限目中、希羅に手紙を書いた。


”なんて言えばいいと思う?”


そう書いた手紙を小さく折りたたみ、前の人に渡して回してもらった。