ないものねだり


いつもならこのぐらいの距離なんともないのに、

今は少し期待してしまってる自分がいて、顔が熱くなる。

何も話せずにいる私に気づいたのか、敦は話を続けた。


「俺さどうでもいい奴となんか一緒に登校なんてしねーよ。
沙矢が通る時間、わざわざ合わせたりもしないし、
教科書貸すのだって、俺ん所来るのほんとはうれしいし……。」


やたら登校が被ってたのはそういうことか。

いつも ”またかよ”って言って貸してくれる教科書も、

敦にとっては嬉しかったんだ。


「俺はあの時みんなから、付き合ってるかどうか聞かれたとき嬉しかったのに、
沙矢、完全否定するし、俺のことまじで友達としてでしかみてねーんだなって。
それに兄妹みたいっていわれるのも嫌なんだよ……。」


そんなふうに思ってたんだ。

でも自分がどう返せばいいのか分からない……。


「なぁ、俺、沙矢の彼氏にはなれねーの?」