ないものねだり


楓は、育ちがよかった。

考えもなしに口に出す様な子ではなかった。

その育ちの良さに高飛車になる訳でもなく、持ち前の天才肌。

とにかく頭がよかった。

ショートの髪に黒縁メガネ。

遠くから見るとよく分からないけど、近くで見るときれいな顔立ち。

大人になったら秘書にでもなろうかなと、笑いながら言っていた。



そんな友達に囲まれ動き出した中学校生活。



いつもどおり教科書を持って、教室を移動する。

2人はもう廊下にいる。


よく言えばマイペースな私。

意外としっかりしてる希羅。

またかとあきれ顔の楓。


「まってぇ~!教科書ない~!!」


引き出しの中はめちゃくちゃ。

奥ではプリントがぐしゃぐしゃになる音が聞こえる。

希羅は


「もぉ~笑 どうやったらこんな引き出し汚くなると~笑」


と、手伝ってくれる。

楓は、


「昼休みすぐ片づけね。」


と、あきれ顔で言った。