俺は、両手に力を込めて、ミツの身体を押し返した。
ミツは後ろによろめき、ガラステーブルに腰を打った。
なめこの味噌汁がガラステーブルからずり落ちて、飛び散る。
そして、ミツは立ち上がると、ベランダのガラス窓を閉めて、鍵をかけた。
「ごめんね」
とガラス越しにうっすら聞こえた。
「ちょ、ちょっと待って!」
という俺の声を聞かず、ミツはカーテンを閉めた。
完全に閉じ込められてしまった。
途方に暮れていると、カーテン越しに橙色の光が浮かんだ。
よくタバコを買うコンビニでサービスでつけてくれるライターの火の色だと直感的に思った。
橙色の光は、次第に大きくなる。
火災報知器が鳴り響く。
ミツが、火を放ったことは言うまでもない。



