「なんか弱みとか握られてたとか、お金関係のトラブルとか、そういうの?」
「ううん。そんなんじゃない。そんなんじゃなくてね……」ミツがゆっくりと顔を上げた。
「なんとなく」
「なんとなくって……なんとなくですることかよ、そんなこと……」
「うん、そうだよね。ごめん」
「いや、俺に謝られてもさ……」
気が付くと、俺はこんな時にもかかわらず、箸を持ったままだということに気が付いた。
ゆっくり箸を置く。そして、言葉を選びながら。
「警察。自首した方がいいよ」
「それはダメ!」とミツがまた俺に詰め寄ってきて、両手で肩を掴んだ。
「ダメ! ダメなの! だって、私の人生、これからなんだから!」



