アオハル・サーキュレーター





「アオイ様、ですね? こちらどうぞ」


とスマートフォンを渡された。黒いスマートフォンで、俺が持っていたスマートフォン(と言っても先の火事で焼けてしまったのだが)よりも最新式のものだった。


「使い方のご説明は、アオイ様が今夜お泊りになるお部屋でさせていただきます」


と言われ、オールバックの従業員と一緒にエレベーターに乗る。


「失礼ですが、アオイ様」とエレベーターに乗ってすぐに、オールバックの従業員が俺の耳元で囁いた。


「これでは後ろがガラ空きでございます。こういうお仕事はいつどこで命を狙われるかわかりません。エレベーターに乗る際は、相手に背中を見せないようお気を付けください」


振り向くと、オールバックの従業員の右手にはキャップ付きのボールペンが、俺のちょうど腰の辺りに当てがわれていた。


刺された! のも同じことだ。油断していた。このオールバックの男、ヤヨイが普通に喋っていたから大丈夫だろうと安心しきっていた。それどころか、信頼のような気持ちまで持っていたのかもしれない。物腰が柔らかく丁寧だからという理由で。そういえば、今日一日、俺はそういったことに注意を払っていただろうか。


ピンッとエレベーターが鳴る。


「さあ、こちらでございます」