アオハル・サーキュレーター





ヤヨイは、それから一言も口をきかなかった。


水色の軽自動車は、サトーちゃんが代行を頼み、物静かで幸薄そうな男がやってきた。代行の運転中もヤヨイは後ろの席で拳銃の銃弾の残りを確認していたくらいだから、きっとこの男も裏稼業の人間なのだろう。


そもそも酒を飲んでいても、別に運転すればいいと思う。それがアウトローって感じだし、そういうものだと思っていた。しかし、ヤヨイは法定速度を守るし、信号無視もしない。サトーちゃんにそのことを聞くと、


「それは三流がやることね。一流の裏稼業者は避けられるリスクは極力避けるものよ。信用がモノを言う世界だからね。依頼する側としても、ハイリスクよりローリスクな方に頼みたいでしょ? 私が大変な仕事をヤヨイに振るのも、ヤヨイを運び屋として一流だと認めているからなの」


と返ってきた。何だか拍子抜けするが、そういうものらしい。俺の運びの仕事に使ったあの軽トラだって、カツさんの車屋ですぐにスクラップにしてしまっている。そういうリスクマネジメントが裏稼業の場合、特に求められるものなのだろう。