サトーちゃんは、この「島の里」を一人で切り盛りしているらしい。
ヤヨイの仕事のことも理解している、裏稼業の人間だ。
「で、そのサトーちゃんは裏では、どういう仕事を?」
「仲介屋だよ。クライアントから仕事を請け負って、あなたたちみたいな人に斡旋するの」
「アオイ、気をつけろよ」とバーボンのグラスを傾けながら、ヤヨイが言った。沖縄料理屋でバーボンである。
「サトーちゃんはろくな仕事回してこない。私なんか何度死にかけたか。おまけに仲介手数料として、分け前のほとんどを持っていかれる。割に合わねえんだよ」
「うふっ」とサトーちゃんは不敵な笑みを浮かべた。
「これでも、ヤヨイにはいい仕事回してるつもりなんだけどなー。ねえ、アオイくんは独立の予定とかある?」
「あ、いえ」と俺は沖縄ビールのジョッキを置いて答えた。
「ホント今日が初日みたいなもんなんで」
「あ、そう。もし独立するなら言ってね? いい仕事特別に回しちゃう!」
ヤヨイがサトーちゃんを軽蔑するような目で見た。どうやらヤヨイが言っていることは本当らしい。



