アオハル・サーキュレーター





ヤヨイは車を出すなり、タバコを咥えた。


そういえばさっきの店、「景味」では1本も吸っていなかった。


「言うの忘れてたけど、景味のケンさんの店でタバコはご法度だ。あれで有名な老舗割烹だからな」


「っていうか、俺、さっきのケンさんって人、どこかで見たことあるような気がするんだよね」


「そりゃそうさ。ケンさんは表向きは日本随一の料理人だからな。名前を聞けば誰でも知ってる作家や、政治家なんかも通う店だ」


「それがなんでこんなこと……」


「さあな、知らねえ。でも、それは人間誰しもそうだろ? いろんな人生があって、いろんな考えがある。詮索は野暮ってもんよ」