「で? その今日の仕事っていうのは、何なの?」
「んあっ? それは粉か錠剤か葉っぱかみたいな話か?」
「粉、錠剤、葉っぱ? それって、薬物?」
「それ以外に何があるんだよ」
「いやいや、それって違法じゃ……」
と言いかけて、口をつぐんだ。よくよく考えたら、昨日からのほとんどが、違法だし、俺自身、もう違法だらけの裏稼業にいるわけだから、ナンセンス。今のは。
疑問を持つべきじゃない。そういうところは。何となく、察して、受け入れるしかない。そうやって、人は仕事を覚え、社会に溶け込む。
だから、この場合に持つべき疑問は、こうだ。
「Client(依頼主)は?」
「まずは積み荷を取りに行く。それから納品先の薬局を回る」
「薬局に納品ってことは、薬局でその、ヤクが買えるってことなの?」
「薬局で薬を買って変に思う奴がいるか?」なるほど、木の葉隠すなら森の中。ヤクを隠すなら薬局ってわけか。
「着いたぞ」



