アオハル・サーキュレーター





下に降りると、カツさんが缶コーヒー片手に、車の前にいた。


「起きたか。準備はできてるぞ」


カツさんが車のキーらしきものをヤヨイに向けて投げた。ヤヨイはそれを両手で受け取り、運転席に座った。


「んだよ、オートマかよ」


「これでも車両代はおまけしてやってるんだ。ナンバー偽装込みで300万だぞ。文句があるなら他を当たれ」


「チッ、わーったよ!」


とヤヨイは車のエンジンをかけた。どこにでもありそうな、軽自動車。しかも色は青色。ダサイ。


「あの、昨日の軽トラ、なんで潰しちゃったんです?」


「え? ああ。あれは、足がつかないようにだよ。俺の仕事は車屋でね。裏稼業で使う車全般を扱う仕事を請け負ってる。まあ、ヤヨイのような運び屋が主な顧客だね」


「本当にカツさんのところの車は、足がつなかないんですか?」


「ナンバーの偽装もしているし、この車だって見て」といわれ、ナンバープレートを見ると、


「ね? 『わ』ナンバーだ。運輸支局にコネがあってね。もちろん、俺も全くリスクがないわけではない。まあ、裏稼業で食っていく部類の中では、リスクは少ないし、割はいい方かな」


「バレませんか?」


「大丈夫大丈夫。仮にマークされてても、最終的には今朝みたいに、鉄球落として、ズドン! スクラップにしちゃうからね。ちなみに昨日の軽トラも『わ』ナンバーだよ」


「その、よくわからないんですけど、『わ』ナンバーってバレにくいんですか?」


「取得するにはいろいろと手続きが面倒だからね。警察は『わ』ナンバーを見ると、レンタカー会社を片っ端から漁るんだけど、出てこない。範囲を広げたってもちろん出てこない。もちろん、それなりの報酬はもらうよ。その車だって、車両代なんかより、ナンバー偽装の方が高くついてる」


そういうもんなんだろうか。と思うしかなかった。