アオハル・サーキュレーター





「なんだ、お前にしては随分と時間がかかったな」


と板金工場の奥から、黒いコートを羽織った長身で、黒いハットを目深に被った男が出てきた。


年は、俺と同じか、少し上くらい……だろうか。


「想定外は常に起きる。んっ!」


と女は俺をあごで指した。


「なんだ。男でもできたか?」


「だったらまだご機嫌なんだが……」


「ふーむ」と男は俺にツカツカ近づき、食い入るように見た。


「見たところ、堅気に見えるが?」


「数時間前までそうだったよ。まあ、新入社員ってやつさ」


「新入社員ねえ……」男は俺をさらになめ回すように、下から上へ見て、ニコッと笑った。


「で、名前は?」


「……アオイ……です」


「アオイくんか。俺はカツという者だ。よろしく」


と、カツが手を差し伸ばしてきて、握った。やけに親指と中指がゴツゴツしているというか、何かのタコだろうか、ついている手だった。