アオハル・サーキュレーター





「お姉さん、あんたは裏の仕事をしている。運び屋のようなそんな仕事を。いくら依頼とはいえ、その依頼が成功したとはいえ、俺に素性を明かしてる時点で、俺は口封じのために殺される。そういうシナリオですよね? お姉さんは本当は、俺を眠らせたりなんかして、秘密裏にあそこへ運ぶつもりだった。俺が起きた時にはもうお姉さんはいない。でも、イレギュラーが起きた。あの火事だ。あの火事のせいで、お姉さんはそれができなかった。だから仕方なく俺に素顔を晒し、運びの仕事を遂行した。荷物が焼けちゃ元も子もないからね」


「何が言いたい?」


「つまりはこうだ。俺の運命はあの時、決まっていたんだ。後継ぎになるか、ならないかの選択を迫られたあの時に。これでもし後継ぎになることを了承していれば、素性を知られていても別にかまわない。お姉さんも俺も同じ裏になるんだからね。だから俺はここでお姉さんに撃たれて殺されても文句は言えない。でも、一つわからないことがある」


「喋りすぎなんだよ、あんた。が、まあ、しかし……」女は吸っていたタバコを後ろ向きで窓から捨てた。


「そのわからないことってやつを聞こうじゃないか」


「何をためらってるんだ? ってことさ。最初はそう思った。何をためらってるんだと。答えは出ている。なのにお姉さんはその引き金を引かない。何かためらうことがある証拠だ。そうだな、例えば、人を殺すことへのためらいか、あるいは、俺に情が移ったか……いや、それはないか。まあいいや。そこはどうでもいい。今こうして頭の中で整理したことを自分の口でつらつら、まるでミステリー小説で探偵がトリックを解き明かすみたいに話してて気づいたよ。違うんだ、これは。ためらいじゃない。これもまた、さっきと同じ。そう、後継ぎになるか、ならないかの選択と同じ」


「選択肢は?」


「Dead or Alive(死ぬか、生きるか)。そう、この2択さ。俺にはまだAlive(生きる)の選択肢が残されている。その選択肢に名前をつけるとすれば……」あれがいい。