「僕、いや、俺、まさか母の家があんな感じだったなんて全然知らなくて。完全に堅気だと思ってたけど、こういう場合、ちょっと違うってことですよね。でも、堅気じゃないと知っても、ちっとも、というか、まったくショックとか、驚きとか、そういうものがなくて」
「淡々と受け入れた。あんたは多分、そういう男さ」
「ええ、だからこの後のシナリオについても、十分わかってるつもりです」
「へえ?」と女は、軽トラを道路の脇に停めた。辺りには街灯が1本あるだけの、そんな暗い路肩だった。
「じゃあ、話が早いや」
そう言って、女は俺のこめかみに銃を突きつけた。
そして、次の瞬間には引き金が引かれ、俺の頭からは赤い血が噴き出し、俺は絶命するのだ。
しかし、女は引き金を引かなかった。いや、まだ引かないという表現がこの場合、正しいのだろう。



