俺は、女の運転する軽トラの助手席に乗り、おじいさんの屋敷を後にした。
「あのじいさんは、ヤーさんの組長なんだよ。御年87歳で後継者を探してた。そこで白羽の矢が立ったのは、じいさんの死んだ娘の息子、つまりあんただったってわけ。私はそれで、運びの依頼を受けて、あんたを探してたの」
「運び屋ってことですか?」
「そういうこと」
「でもなんで後継者が僕なんです?」
「気になるならさっき自分で聞けばよかっただろ」と女はタバコを咥えた。
「でもあんたは聞かなかった。それが答えさ」
答え。そう、なんとなくだが、わかっている。
「多分、後継者の候補のような人たちはいたと思うんです。ほら、例えば黒服に指示して僕を離すように言ったあの人とか。でも、できれば血縁者がよかったんじゃないかと。後継者が血縁者なら、まあ、無駄な後継者争いから組が分裂なんてことも起こりにくいでしょうし。ただ……」と俺もタバコを咥え、火をつけた。
「今まで堅気だった僕が、急に後継者になったら、それはそれで不満に思う人は出てくるんじゃないかと。つまりはまあ、なんとなく。そう、なんとなく僕に聞いてみようと思ったんじゃないかと」
「ふーん」
と女は興味なさそうに反応した。



