「へい、たしかに」と女は札束2つをバッグに入れ、残りの札束1つから1万円札を1枚抜き取り、黒服に向けてひらひらさせた。
「タバコくれる?」
黒服は奥から、タバコの箱を15個ばかり持ってきて、女はそれを14個ほど、バッグに仕舞い、うち1箱を開け、1本抜き取り、オイルライターで火をつけた。
「どうした? まだ未成年か?」
「あ、いえ」と俺はグラスを手にした。
「本当に、僕のおじいさん、なんですか?」
「ああ、正真正銘のな。お前の母親は、わしの娘だ」
「でも、母のお父さん、つまりは僕の母方の祖父は、僕が小さいときに亡くなったと聞かされましたが……」
「無理もない。わしがこの家業を継いだのは、今から29年前のことだからな。堅気ではないわしとは縁を切りたかったのだろう。お前の父親もそれを望んでいた」
「なるほど」



