軽トラとすれ違う形で、救急車、消防車、パトカーを数台見送った。
「ねえ!」と軽トラを運転している女が、俺にだろう、言った。
「タバコ、持ってたら一本くんない?」
「あ、はい……」
俺はポッケからタバコの箱とライターを取り出し、女が伸ばす手にそっと置いた。
「げっ、メンソールかよ。男のくせに」女は文句を言いながらも、俺の渡したタバコに火をつけ、煙をくゆらせた。
「で、どうよ? 荷物になった気分は?」
「あんまりいいものではないですよ」
「まあ、豚も肉になる前はこんな感じだよ。あんただってトンカツくらい食べたことあるだろ? まあ、罪滅ぼしとでも思って、我慢するんだな」



