資格マニアの私が飛んだら、なぜか隣にこどもと王子様が寝てました





・・・



(……ここは……)


夢と現実――いや、夢になりきれない世界を生き来したせいで、目が覚めるとやや混乱していた。
見覚えのない天井の色を見て、最愛の人たちはいないんだと落ち込む寸前、真上に端正な顔が現れた。


「おはよう、俺の妃」

「……っ、ばか……」


その台詞で一気に昨夜のことを思い出して、慌てて顔を隠したけれど間に合わない。
唇を奪われて侑李の首に腕を回したのは、つまり、逃げるつもりはこれっぽっちもなかったのだ。


「恥ずかしいどころじゃない台詞で自分でも引くけど、やっぱり何だかしっくりくるんだよな。それが事実だったのと、俺の中でもそれが真実だから」

「……そっちのが恥ずかしい気がする」

「本当なんだから、もう照れてたって仕方ないだろ」


肩にそっと、でもゆっくりしっかりと口づけを落とされて何も言えなくなった。


「とりあえず、明日からの生活をスムーズにする為に、ちょっとした設定くらいは擦り合わせといた方がいいかも。まさか、異世界で夫婦でしたとは言えないし。それはそれとして、できるだけ嘘を吐かなくていいようにしようね。君、そういうの下手すぎるから」

「それは賛成。いきなり一緒に退社したりして、注目浴びてたし……って、さすがにそんなに下手じゃない。私だって大人なんだから、無表情でそれなりのことを平気でやってのける……」

「ってことにしてあげたの。バレないように必死なの、可愛かったから」


(文句を……今度こそ何か、文句を……)


いくら探しても、やっぱり特に見つからない。
時間切れとばかりにキスされてしまって、すごすごと侑李の胸に戻るしかない。


「……あのね、侑李」


いつの間にかベッドサイドテーブルにある眼鏡を見て、侑李の頬に触れる。
すごく新鮮な気持ちになることが擽ったくて、それと同時にしみじみと思うのだ。


「あの感じの悪いエナも、きっと私だと思う。あっちでは別人だと思ってたけど、今はあれも私の一部だと思うんだ。私、武装してた。傷つかない為に強くならなきゃって思ったら、いつの間にか嫌われ役が楽になって……それも仕方ないなって」

「全員に好かれるのが無理なことも、その必要もないのも正しい。頑張り屋で空回りしがちで、それでも諦めないエナだって、同じ君だろ」


「何かやってる」ことで、虚無感を埋めていた。
それが悪いことだとは今でも思わないし、どこであろうと役に立ったことも事実だ。
きっと、この世界でだって無駄にはならないし、これからはもっと活用していきたい。
でも、見つめ直したり、良くしていきたいところがあるのも今なら認められる。
今すぐ、一気に変えていくのは無理だけど、何となく、ちょっとずつならできそうな気がするの。


「なに、ニヤニヤして」

「私にしては、ポジティブなこと考えたから。侑李といると、全部叶えられそう」

「ここでの俺も、第一王子の俺もわりとネガティブだけどな。でも、君といるとそんな自分も嫌じゃなくなる。君がやらかすことに備えとくって、あっちでは必要スキルだったから。その斜め上を行かれてたけど」

「う、うるさいな」


分かってる。
うるさいのはいつも……ほとんど私の方だった。
だから、この口を塞がれたってそのとおりだと思うし、そもそもキスされること自体に異論はない。


「まあでも、叶えるよ。できるだけ全部……ノアのことを含めてね。頑張らせてね、俺の……」

「〜〜っ……」


――奥さん。……に、なってもらえるように……さ。


「……あ」


再び背中がベッドへと沈み、それにしては色気のない自分の声と、愛しい可愛らし声が脳内で重なる。


(ポジティブにならなくても分かる……)


――きっと、絶対。私たちは叶えられる……って。







【おわり】