と、いうことで。
あの世界の住人たちは、あの世界で元気に暮らしている。
「いろんな考え方がある。でも、あの人なりに俺やエイン……きっとノアのことも、大事に思ってたんだって、そう思うようにしてる。もし違っても、向こうの俺たちが、絶対にノアを愛してるから」
「……うん」
(……ノアくん……)
会いたい。
「母様」じゃなくてもいいから、もう一度会って、バンザイするノアくんを笑いながら抱っこして――……。
(嘘つき)
――やっぱり、また「ははしゃ」って呼ばれたい。
「……これくらいかな。合ってるかは分からないけど、俺はそう信じてる」
「私も」
確かめようはないかもしれない。
もしできたとしても、確かめた結果傷つくかもしれない。
でも、私にとってもあれは夢ではなく真実だ。
「それで……その。君にとって俺は……」
「……子どももいるのに、お友達からなんて言わないよね」
そんなことを言ったのは、そこで低くユーリに腹が立ったからだ。
そして、どうしてイラッとしたかと言えば。
「……好きだ。こっちの世界でも、俺といて……」
「……うん」
もう絶対に、彼を初対面だとも同じ会社の人だとも思えない。
「とは言え、まずは自己紹介しないといけないよね。名前と所属部署とか」
「何それ」
笑って取り合わない私に、ユーリはこっちでは「侑李」と書くのだと教えてくれた。
「だって、俺も英菜のことが知りたいし。……ね」
気を遣ってくれたんだと思う。
せっかく説明してくれてるのに、泣いてばかりの私を気遣って笑わせてくれた――それも、きっと本当だけれど。
「触れてもいい……? 」
そっと頬を包んで、頷くのを見届けてから涙を拭いてくれた。
「きっといつか、ノアにも会えるよ。どんな形になっても、絶対に。それでも、俺は努力するから。……また、同じ形で三人で過ごせる可能性が少しでも高くなるように」
ノアくんに会えるかもしれない。
もう、会えないかもしれない。
会えたとしても親子じゃないかもしれないし、だとしても誰のせいでもないのに、侑李は真剣な瞳でそう言ってくれた。
「……私も」
だから、私も。
ノアくんの母親だって胸を張って言えるように、頑張りたい。
「でも、もしノアくんに出逢えなくても……向こうで幸せだって信じて、あなたといたい」
ノアくんに会う為に、侑李といるんじゃない。
始まりは異世界での生活だったとしても、今侑李といるのは単純に目の前にいる彼に惹かれているからだ。
そして、その先にきっとノアくんがいるんだって信じていたいの。
「英菜……」
少し強めに抱きしめられ、ハッとして力を緩める侑李に自分から腕を回す。
「いいのか……? 」
少し、ユーリの色が濃くなった口調だなと思い、すぐに心の中で打ち消した。
人は誰しも、いろんな表情を持っている。
気づいていないだけだったり、知らないだけだったり、本人が意識して見せていない場合もあるだろう。
この顔も、きっと侑李の一部。
彼の問いかけにしっかりと頷いたけれど、言葉にはならない。
結果、目を瞑るという少し狡い委ね方をする私に、侑李はゆっくりと唇を重ねた。



