資格マニアの私が飛んだら、なぜか隣にこどもと王子様が寝てました



何も知らないくせに、驚きのあまり声にならないのは本当に失礼な話だ。
でも、ユーリやエインから聞いた話とはかけ離れていて、一度会っただけの私の印象ともまるで違ったから。


「私もです。お会いすることなどあり得ないとはいえ、とても信じられません。実は、ずっとお話しするべきか迷ってたんです。この話を聞いて、王に対する印象が変わったせいで、皆様に何か悪いことが起こりはしないかと不安で」

「そうよね。私も、ユーリが知るべきなのか確信はもてないわ。でも……話そうと思う」


ユーリは、国王がノアくんの能力を欲しがっていると言っていた。


(ユーリの勘違い……? それとも……)


ノアくんを守る為?
いや、全面的に信頼するのは危険だ。
でも、息子二人の認識が間違っているのなら、一体どうしてそんなことになったのか。


「王妃の目が厳しかったと聞いています。それはもう……恐ろしい方だったそうですから」

「そんなに……」

「はい。以前のエナ様なんて、比べものにならないくらいに」


余程険しい顔をしていたのだろうか、そんな冗談……ではないかもしれないけれど、ジルはそんなことを言って少し笑わせてくれた。


「それに、他の目もあったのでしょう。急にお世継ぎ候補がもう一人となれば、城内も混乱いたしますし」


城内の分断を避ける為、兄弟を守る為に一時的にエインを遠ざけた――それでも、当人にしたら一時的とはとても言えないほど長い時間だ。


「犯人が王の手先の者なら、あまりに残酷です。でも、もしもそうじゃないなら、一体誰があんなことを……」

「……そうね。話してくれてありがとう」


真偽は分からない。
それでも、一度決めたことは変わらない。
守りたい人がいる。
ただ、それだけだ。



・・・



「……確かにそれは、俺たちだからこそ知りようもないことだな。しかし……」

「すぐに信じられないのも当然よ。ちょっと聞いただけでも、ユーリにもノアくんにも酷い態度なんだもの」


ユーリが部屋に帰ってきてすぐ、ジルの話を報告した。
彼は飛びつかんばかりの私をふわりと抱き留めて、ひとつキスをしてくれた後、「なんだ、真面目な話か」と文句を言いながらも、器用に私とノアくんをベッドに座らせた。


「限りなく希望に近い話ではある。まあ少なくとも、エインに詳しく聞いてからの判断にはなるな。……それにしても……」


――俺の妃は、可愛いや愛しいだけではいてくれなくて困る。


「……っ……。こ、これは私じゃなくて、ジルやみんなのおかげよ。私は、ただ椅子に座って聞いてただけ」

「だが、ジルだって誰彼構わず話したりはしないだろ。寧ろ、妃には言いにくい内容だ。それを聞き出せたのだから、お前の功績だ」

「そんな大したことじゃ……」


大袈裟な表現に振られた首をそっと人差し指で捕らえ、今度は否定させないように唇を塞がれた。


「教えてくれ、エナ。俺にそうまでしてくれるお前に、俺は何をどう返せる……? 」


甘い言葉を、これほど不器用に吐く人だっただろうか。
少なくとも、初対面では絶対に違った。
あの頃に聞いた台詞はどれも上手で、もしかしたら今よりも更に甘く、計算づくでムカつくほど隙がなかった。


「私は私の為に、好きでやってるの。だから、あなたも好きにしたらいい」


――でも、今の方がずっと、胸が優しい苦しみとともに締めつけられる。


「なるほど。……本当にそれでいいのか? 」

「……え……っ」


そんなユーリの方が好き。
その考えは高慢だっただろうか。
少なくともほんの少し、私は間違っていた。


「いや。お言葉に甘えて、俺の好きにさせてもらうことにした」


わざとらしくニヤリと口角を上げ、やけにゆっくりとした動きで私の髪を梳き、背中に触れ、腰を抱いて。
それはあまりにもそっとで、時間もたっぷりあったはずなのに数歩ふらつく私を支え、もう一度。

至近距離で見つめながら、真っ赤になっているだろう頬を意地悪に撫でるユーリも、もちろん私は大好きなのだ。