資格マニアの私が飛んだら、なぜか隣にこどもと王子様が寝てました









(……とは言え、表立ってできることを思いつかない……)


幸い、あれから数日でノアくんの様子は落ち着いてきた。
今でも、ぴったり私の後を着いてきてくれるのは変わらないけれど、また一人遊びをしたりエインと一緒にいたりするようになったし、時折レックスも相手をしてくれている。


「エナ様? ご気分が優れないのですか? 」


お茶を持ってきてくれたジルが、心配して声を掛けてくれた。
そういえば、エインにもレックスにも正体がバレているのに、一番身近にいていろいろお世話になっているジルにだけ、嘘を吐いているままだ。
信頼している彼女に、自分を知ってもらえないのは残念だ。
心苦しくもあるけど、絶対に巻き込むわけにはいかないから、これでいいのだと思う。


「ううん。私だけ何もできてないのが悔しかっただけ。それより、もしよかったら私が来る前のことを教えてくれない? 」

「エナ様がいらっしゃる前のこと……ですか」

「うん。もちろん言える範囲で構わないの。ジルから聞いたことも、誰にも言わないわ」

「昔話か、噂話の類になってしまうかもしれませんが……」

「何でもいいわ。そうね、たとえば……ユーリ様が子どもの頃の話とか。そんな昔だと、ジルも知らないかしら……」


まさか、エナとユーリの話なんて、本人を前にしては言えないだろうと昔の話を振ってみたが、若いジルには知りようがないことだ。


「いえ。実は、その……使用人の間では有名な話なのです。恐らく、ユーリ様・エイン様ご兄弟自身がご存じないことだと思います」


意外な言葉にびっくりして見つめると、僅かにジルの目が脇に逸れた。


「ごめんね。言いたくなければ、無理はしないで……」

「……正直、お話ししていいのか分かりません。又聞きになりますし、それをお信じになってエナ様やノア様に危険が及んだらと思うと恐ろしくて。それに、それが間違っていた場合、ひいてはこの国自体に影響がでないかと心配なんです」

「どんな結果になっても、ジルやみんなのせいじゃないわ。聞いてしまえば、ユーリに話すことにはなる。でも、あの方はそれで咎めたりするような人じゃない。絶対にさせないから」


ユーリとエイン当人だからこそ、知らない話。
知ってしまうリスクと知らないままでいるリスクを少し考えたけれど、やはり興味が勝った。


「エイン様がお生まれになった当時を知る者の間では、有名な話なのだそうです」


ジルも同じだったのかもしれない。
信じてくれたことに驚きと喜びを感じていた時、すぐに口を開いてくれた。
そして、思わずぎゅっと握ってしまっていた手を握り返してくれ、こう続けた。

――エイン様は、王の戯れでお生まれになったのではない。本当に愛し合われて、母君との間にお生まれになったのです。