資格マニアの私が飛んだら、なぜか隣にこどもと王子様が寝てました





あれから、外にいた見張りに医師を呼んでもらって診断されたのは、ユーリの言うとおりただの風邪で。
それを証明するかのように、翌朝にはノアくんの熱はすっかり下がっていた。


「……ノア、いい加減に……」


でも、パッチリ目を覚ました瞬間から、私にピトッとくっついて片時も離れない状態がお昼を過ぎた今も続いている。
ユーリが注意しても、頑として聞き入れる気配がない。


「ノアくん。どうしたの? 」


怖い夢でも見たのだろうか。
あれからもう何度目か尋ねたけれど、ノアくんは嫌々と首を振るだけだ。


「……何かあったのかしら」


少し考えれば想像できることだったのにそう漏らしたのは、きっと私自身がその可能性をす否定したかったんだと思う。


『ははしゃ。行かないで……』


熱にうなされながら、ノアくんはそう言った。
つまり、彼は予知したんじゃないだろうか。
私がこの世界から消える、そう遠くない未来を。


(……時間がない)


もうこれ以上、のんびりしている暇はない。
私がここにいられる残された時間で、ノアくんやユーリを狙う人物を突き止めなくては。
間違いなく、私はもう幸せを享受した。
初めて、ノアくんが一続きの言葉を話すのを聞けたんだから。だから――……。


「やめろ」


上からそっと包み込むように抱かれ、顔がユーリの胸で優しく潰れる。


「帰る準備などするな。……お願いだから」


上からは大好きな人に包まれ、足元では愛しくて堪らない存在にくっつかれている。
この幸せを失うのは辛いけれど、二人のことが大切だからこそ守りたい。


「ここにいられる方法を探す。もし選択を迫られたら、絶対にここにいる方を選ぶわ。でも、現状を放置できない。この事件を解決しなくちゃ」


この件が解決したら、私は消えるのだと思っていた。
それが正しいのか確かめる方法は、今のところその時になってみないと何も分からない。
それでも、何をどうやればいいのか分からなくても、抗うだけ抗ってみせる。


「時間を惜しむように愛し合う、とはいかないのだな。まったく、お前は……」

「時間は惜しいわよ。だから、さっさとこの件を終わらせて……その。それに、今だって愛してはいる」


何より、二人の身の安全が第一なんだし。
こんな状況でどうこうしたってスッキリしない――いや、涙に暮れて結ばれるより、ハッピーな方がいいではないか。


「なるほど。俺に抱かれる前に、諸々スッキリしておきたいと」

「……そ、そこまではっきり言ってな……」


唇が重なる。
ノアくんに脚に抱きつかれる感覚を覚えて、閉じかけた目を無理やり開けた。


「 “めっ” は出ないな。寧ろ、協力してくれていると思うが」


ニヤリと笑ってくれてよかった。
事実、私は動くことができないのだ。


「……まったく」


なのに、ユーリの瞳は揺れている。
頬に触れた指先は優しく、幸せを生み出すと同時に切なくなる。


「悪役に向かない人ね。慣れないことはしない方がいいわ」


思えば、最初からそうだった。
ムカついたし、時に怖いとも思ったけれど、この人を嫌いになる要素にはならなかった。


「つまり、あなたは王様に向いてるってことよ。もちろん、父親にも」

「……夫には? 」


嫌うよりもずっと早く、好きになってしまったから。


「愛してる。だから、あなたやノアくんが幸せになる世界が見たい。私の目で」


その為にやれることはすべてやる。
消える為や帰る為でもなく、この二人の側でそれを見られるように。
すべてやりきれば、後はもう願ってもいいと思うのだ。

明日もまた、いつかのようにこの二人の間に挟まれて、目が覚めますように……と。