(……暇だ……)
夢の中で、そんなこと初めて思った。
あの後、本当に侍女が食事を持ってきてくれたし、彼女は間違いなくジルと言った。
お召し替えの手伝いはさすがに遠慮したけれど、その他は何もすることがなく、時間の進み具合はあまりにもゆっくりだ。
「まあ、エナ様……! そのようなこと、私どもが致します。それに、ノア様のお世話も」
「え? いいですよ、そんな。ノッ……アの遊び相手くらい」
しまった。
また、おかしなことを言ってしまった。
遊び相手も何も、私は母親だっていうのに。
というか、単なる遊び相手になっててはいけないのでは。
「……でも……」
困惑の表情を見て、更に間違いを見つけた。
もしかして、この世界では身分の高い人は自分で子育てをしないのかもしれない。
もしくは、私――エナは、そういうことをしてこなかったのかも。
「さあ、行きましょう、ノア様。お母様はお忙しいのです。絵本なら、ジルが読んで差し上げますから」
ぽょっと眉が八の字になるのは、本当に可愛い。
お腹を痛めた記憶も、そっ……そういうことをした記憶も一切ないけれども、彼といればいるだけ、愛しさが込み上げてしまう。
「……ジル、やっぱり悪いわ」
「悪いなんて、滅相もない。それが私の仕事ですし……実は、その。私もエナ様のようにそろそろ……なんて思っていて。も、申し訳ありません」
そうか。
妊活中……ということだろうか。



