「……ん……」
暖かい。
ああ、またコタツで寝落ちしてしまった。
(……ダメなやつだ、私は……)
電気代やテーブルを散らかしたまま寝てしまったことへの罪悪感で、またやるせなさが募る。
(……でも、ん……? )
それにしては、私は足を伸ばして寝ているみたいだし。
肌から伝わる感触も、カーペットのふわふわというよりは上質の絹みたい。
いやいや、そんなもの私の部屋のどこに存在するっていうの。
(ん……んん……?? )
暖かいけれども、コタツの温もりとはまた違う。
何とも安心するこれは、まるで――というか、想像でしか知らないけれど、何と言うか、人肌、みたいなと言いますか。
「……ん……ははさ、ま……? 」
(……人声……!?!? )
一人暮らしのアパート、自分の声すらしないっていうのに。
それも、これは、そんなまさか。
(こ、こどもーー!?!? )
私の背中にくっついて、まだ起きないでとばかりにイヤイヤしているのは、紛れもなく子どもだ。
2、3歳くらいだろうか、子どもと接する機会がないのでよく分からない。
(……え……ゆ、誘拐……私が……? 他人様の可愛いお子さんを連れ帰った……? )
そんな馬鹿な。
いくら幸せそうな家族を羨ましいと思ったって、誘拐なんてするわけない。
絶対にあり得ませんから。どうか信じてください、神様。
そう夢だ、これは。
夢に決まっている。
そう結論づけると、やや落ち着いてきた。
改めて見てみれば、私から離れようとしないのは金髪の男の子。
ますます、夢としか思えない。
夢、そう夢なら――……。
「さらさら……」
頭を撫でると、それこそ絹糸のような手触り。
起こしちゃうかなと心配したが、むにゃむにゃ何事か呟いたと思ったら、んふふと笑った後、すやぁ……と再び眠りに落ちてしまった。
(可愛い……天使だ……)
母性本能というものが、こんな私にも備わっていたことに安堵する……って違う。
安心していいところじゃないし、そんなポイントも何一つない。
「……っ……」
男の子の方に向き直って逆を向いた背中に、今度は別の重みを感じる。
「……あらら。ノアのやつ、来ちゃってたか。服、着ててよかったね……? 」
今度は声に驚く暇も、余裕もなかった。
だって、聞こえたのはもっと低音で、それゆえ子どもじゃないことがすぐに分かって。
というか、低いのも掠れているのも、ただそれが大人の男性だからでも、単なる寝起きだからだとも言えないような――いえ、経験ないから知りませんけど……!!!!
(……な、なんで……夢にしてもなぜ……!? )
「まだ邪魔されちゃうのか。我が子とはいえ、ここまでくると憎くなるな。ね、俺の奥さん? 」
(なんで、足、絡んでるの……!?!? )



