色褪せて、着色して。~リリアン編~

 やっぱり…。
「ヒサメ様にお会いした際、違和感を感じました。この国ではありえない違和感です」
「…マヒルさんは、魔法が使えるの?」
 混乱したように、カスミ様は前のめりで言った。

 庭園での美しい花に、蝶がひらひらと舞っている。
 畑の手入れだけでなく、庭園の手入れもカスミ様がやっているという。
 私は黙って、にっこりと微笑むことしかできない。
「ヒサメ様は呪いをかけられたんですね。それも、かなり前に」
「…ええ」
 カスミ様は空を見上げた。
 ティルレット王国は、日中ほとんど晴れている。
 真っ青な空が広がっていた。
「夫は国家騎士として、隣国に行った際・・・」
 言葉に詰まったかと思うと。
 カスミ様の目からは、ぼろぼろと涙が溢れていた。
「無理に話されなくていいですから」
「いいえ…呪い自体を話すことが苦しいんじゃなくて。あの人の奥さんが…」
 奥さん? 奥さんは貴女(あなた)でしょ…。
 と喉元まで出てきたけど。空気を読んで声には出せなかった。
「いえ。えっと。それはいいとして。隣国に行った際、魔女に呪いをかけられたそうなんです。だから、見た目は17歳のまま止まっちゃっていて…だから」
 ハンカチを取り出したカスミ様は溢れ出る涙を拭いた。
 泣いている人を見ると、罪悪感でいっぱいになる。
「あの。カスミ様。私が言いたいのは…」
「ああ、ごめんなさい」
 これ以上、泣かせてはまずい。
「ヒサメ様の呪いは、スカジオン王国に行けば、解けます」
 直球で、言うと。
 カスミ様は「え」と声を漏らして、固まった。
 顔には「そんなはずはない」とありありと書いてある。