色褪せて、着色して。~リリアン編~

 私は、基本的に同性の人間と仲良くできない。
 高校時代は、この美貌のお陰で。
 テイリーがいたし、元婚約者がいた。
 先生がいたし。クラスメイトの男子は親切にしてくれたし。
 …まあ、女友達がいなかったということ。

 この国に来ても。それは継続していて。
 カレン様は、勿論。目の前に座っているカスミ様も本当のことを言えば、好きじゃない。
 本当は好印象を持っていたけど。
 私が路頭に迷った時に助けてくれなかった。
 だから、どうでもよくなった。それだけのこと。

 そんなことを言ってしまったら、身近にいるバニラはどうなってしまうんだということになる。
 何故か、バニラは平気だ。
 人間じゃないから? そこはあんまり考えないでおく。

「お忙しい中、申し訳ありません」
 ぺこりと頭を下げるとカスミ様はぶんぶんと首を振る。
「いいのいいの。たまには外でお喋りしないと、息が詰まっちゃうから」
 カスミ様は子育てと畑仕事で忙しい。
 今日は無理言って時間を作ってもらっている。
 いつもだったら、カイくんたちが遠くから見守っているけど。
 人払いをお願いしてもらって。
 カスミ様のお子さんの面倒を見てもらっている。

 いつもは女子会と称して、バニラも座って3人でお茶とケーキを食べているが。
 今日はすぐに帰れるように、お茶は辞退した。
「事前に言っておきます…失礼なことを言います」
「え、なあに?」
 カスミ様は血筋としては「貴族」だけど。
 農家の娘…としての生活が長かったせいか、時々。言葉遣いが崩れるときがある。
 それが、居心地良いってときもあるのかもしれないけど。

 相変わらず、あの日以来。屋敷に入ることは許されず。
 庭園でお喋りしている。
「ご主人のヒサメ様に会いました」
「えっ…」
 驚いた表情を浮かべた後。
 カスミ様の顔色がみるみると青ざめていくのが見えた。

 この人はずっと、脅えている。
 夫の存在を知られることに。
 ずっと、脅えていた。
 カスミ様は「なんで…」と呟いて、うつむいた。
 数秒黙った後。
「…ああ。ごめんなさい。いつかは会うはずよね」
 と言った。
 声は小さく、普段よりも低い声だ。
「あの、カスミ様」
「夫が若すぎるって言いたいんでしょ?」
 開き直ったかのように、カスミ様はこっちを見た。
「マヒルさんの国では、いないのかもしれないけど。年の差夫婦っていうのは・・・」
「いえ。そうじゃなくて…カスミ様」
 カスミ様は隠し通したいらしい。
 怒っている姿を初めて見た。
「じゃあ、何?」
「呪いですよね? ヒサメ様は」

 呪い…という言葉にカスミ様は目を見開いた。