何故、軟禁されたのか?
 何故、ルピナス様は私を花嫁にすると言ったのか?

 すべては夢であってほしいと思ったけど。
 目を覚ましても。
 机の上に置いたブローチは幻ではなく、きちんと置いてあるではないか。
 明るい中で、じっと眺めると。
 ブローチは花の形をしていて。
 金色の花びらに。
 真ん中は宝石だろうか…きらりと赤く光っている。
「秘宝って何」
 机の引き出しに突っ込んで。
 考えないようにする。

 身支度を終えて。
 ダイニングルームへ行くと、既に朝食の支度が出来ていた。
「おはようございます、マヒル様」
 とバニラがキッチンから出てきた。

 おはようと口に出して。
 昨日のことを質問していいのか、迷った。
 でも、バニラのことだから。
 上手く、かわされるんだろうな。

 気づけば、フォークでプチトマトをつっついていた。
 なんて、お行儀の悪い行為なのだろう。
 我に返って、トマトを口に放り込んだ。
「マヒル様。お疲れのところ申し訳ありませんが、昨日。サンゴ様がいらっしゃいまして。一度、お話がしたいとのことです」
 目の前に座ってバニラが言った。
 侍女とはいえ、バニラとは一緒に食事をするようにしている。
 私は、サンゴ…という言葉を聞いた後。
「ぎゃっ。忘れてた」と大声で叫んでしまった。