お風呂に入り縁側で涼む私は、
膝を抱えたまま色々考えていた。
皐月としての私はどうしても、
酒向さんを上司や尊敬する人として
見てしまう
それじゃあ‥‥紗英としては?
家族とも疎遠で、友達付き合いもない
私には、こうすればいいというお手本が
何もないから本当に分からない。
25歳なのに、15歳のままの自分でも
出来る事‥‥‥
「‥‥どうしたらいいんだろ。」
『何が?』
ドクン
真上から私を覗き込むように見下ろす
酒向さんに全く気付かず、ビックリして
上を見上げると、大好きなアイスを
差し出され両手でそれを受け取った
『それで?何がどうしたらいいの?』
「えっ!?‥‥‥あ‥その‥‥
色々考えてしまって‥」
とかいいながら、カップアイスの
蓋を開けてちゃっかり食べようとしている自分に、本気で悩んでるの?と
問いただしたくなる
酒向さんが買ってくれた水色の浴衣を
着るのも4度目‥‥
今日も相変わらず浴衣姿から色気が
滲み出ている彼とは対照的に、色気も
出ない自分に涙が出そうだ
『その考えてる事は俺には言えない?』
「‥‥‥‥」
アイスを頬張ると、口を開けた酒向さん
にもスプーンで掬って差し出すと
薄い唇でパクっとそれを食べてくれた。
切り出すまでにどう言おうか悩んで
いる間も、急かす事なくアイスを
一緒に食べてくれている酒向さんの
優しさに、食べ終えると和室で
姿勢を正して向き合って座った。
『大丈夫‥‥新名のペースでいいから
ゆっくり話してごらん?』
唾を飲み込み小さく深呼吸を何度か
繰り返すと、俯いていた顔を上げ、
酒向さんの目を見つめる。
「‥‥‥あの‥‥私に何かして欲しい
こととか望む事とかありませんか?」
沢山1人で考えてみたけど、
やっぱり経験がないから何も浮かばず、
本人に聞くことにしたのだ
マーケティングのように、経験して
アイデアや知識が増えていくように、
恋愛に関しても少しずつ増えていけば
いいと思っている
相手が喜ぶ事をもっと察知して
事前に準備できたらいいのだとは
思うけど‥‥やっぱり難しい‥‥
『前に新名の事を考えるだけで
おかしくなるって言ったのを
覚えてる?』
酒向さんの手が私の手を取り優しく
握ってくれる
あの雨の日にそう言ったのを覚えてるし、私も同じようにそう思った。



