遣らずの雨 上


カラカラカラ


『いらっしゃい‥‥2人で来るなんて
 久しぶりやね。』


大好きな私の居場所でもあり、
父と母のような千夜さんと修さんの
笑顔に出迎えられようやく来られた
【むらせ】。


「千代さんこんばんは。
 カウンターに座ってもいい?」


『勿論やよ。酒向さんもこんばんは。』


『千代さん、修さん、こんばんは。』


週末ともなると、混み合う店内は
テーブル席は埋まってしまい、
アルバイトの若い2人が2人を
サポートしてくれている。


懐かしいな‥‥‥。
つい数年前までは私がああして
2人と過ごしていたのに‥‥。


「修さん、急がなくてもいいから、
 2人の好きそうなご飯をお願い
 します。」


厨房で忙しそうに動く修さんと千代さん
にそう声をかけると、軽く手を挙げて
答えてくれた。


『ここは人気店だね。』


「はい‥‥また酒向さんと来る事が
 出来て嬉しいです。」


『フッ‥‥そうだな。』



大好きな出汁巻卵をたっぷりの
大根おろしで頬張り、新鮮な
鯵のなめろう、具沢山の豚汁、
鯵の染みた味噌おでんなど、その他も
酒向さんと沢山美味しく頂いた。



『どうぞ。』


スーパーに寄ってから、
昨日ぶりの酒向さんのお家に帰って来た



本当に私‥‥今日ここに泊まるの?


準備をして来ておきながら、今更に
なって変に緊張して来た‥‥。


『お風呂の準備するから待ってて。
 後で色々案内するよ。
 冷蔵庫に適当に買ってきたものを
 入れてくれる?』


「は、はい。」


人の家の冷蔵庫なんて初めて開ける
から緊張しつつも、大きめの黒い冷蔵庫
をそっと開けると、私の家より充実
した調味料や材料に驚いた。


自炊をしてるのは知ってるけど、
明日一緒に作るのが不安になってくる


こんな事なら少しは予習をしてくる
べきだったのに、【むらせ】が
楽しみ過ぎて頭の片隅にもなかった



『新名おいで。』


手招きされ着いて行くと、
洗面所、脱衣所、浴室があり、
トイレも全てリフォーム済みなのか、
旅館ように和風でとても素敵だ。


『あとはもう一室和室と、寝室に
 してる部屋がここ。』


ドクン


障子繋がりになっている部屋の奥を
酒向さんが開けると、和室に大きな
ベッドがドーンと置かれていた。