遣らずの雨 上

「ふぅ‥暑いな‥‥」


地下鉄に乗り名駅に到着すると、
ロータリーで待っていると連絡があり
外に出た


13時をまわり暑さもピークを迎える
時間帯だけに、遠くのアスファルトには
陽炎が見えてしまう


今からこんなに暑いと、8月に入ったら
どうなってしまうのだろう‥‥


『新名、こっち』


キョロキョロとしている私に、
ハザードをたいて停まっていた車の窓が開き、運転席から酒向さんが手を振って
くれたので駆け寄った。


「お疲れ様です。
 今日はお休みなのにありがとう
 ございます。」


『新名さん、私もいるわよ?』


ドクン


酒向さんの奥から顔を覗かせた宮川
さんが、かけていたサングラスを
少しずらすと体がなんとなく強張る


酒向さんもサングラスをかけてるし、
あまりにも2人がお似合い過ぎて、
今日の自分の格好を恥じてしまう


「宮川さんお疲れ様です。」


『暑いから乗って?』


「は、はい‥失礼します。」


後部座席のドアを開けると、酒向さんの
後ろ側に座りシートベルトをつけ、
鞄から取り出したハンカチで額の汗を
拭った


ベージュのリネン素材のボタンダウンのシャツに、お揃いのハーフパンツを
合わせてきたからいつもよりは涼しい
装いではあるけど、宮川さんの前では
多分何を着ても霞む気がする


『早速だけど、路面店に向かうけど
 準備はいい?』


「はい、よろしくお願いします。」


涼しい車内が快適過ぎて、ホッと
しつつも、前の2人が視界に入り、
気にしないようにしたいのに、
楽しそうな会話や、さり気ない
ボディタッチに目がいってしまう。


同期って言ってたし、元々は東京本社で
一緒に働いていた訳だから、仲がいい
のは当然だよね‥‥‥


やっぱり1人で来た方が良かったと
思える場違いな疎外感に、卑屈になる
自分がとても嫌だった


『車を置いてくるからお店に入ってて
 いいよ。』


路面店の前で降ろして頂くと、近くの
コインパーキングに酒向さんのみ
行ってしまった。


「‥‥‥‥入りませんか?」


『あなた市場調査に来たのに、
 正反対の服を着て来るなんて、
 マーケティングとしてどうなの
 かしらね?』


えっ?


『うちのブランディングのコンセプトは
 特別な日に着たくなる1着でしょ?
 それなのに、駅から出てきたあなた
 を見て、酒向君笑ってたわよ?』


嘘‥‥‥‥酒向さんが?