遣らずの雨 上

同期ということは宮川さんも33歳
なのだろうか?


綺麗なんだけど笑うと幼さも見えるし、
可愛らしい人だけに30歳以上に
思えない。


『佐藤さんと新名さんは、午前の
 会議に企画チームと一緒に出て
 貰ってもいいかな?
 雑誌やメディア、WEB広告が
 かなり大切になるから。』


『「はい」』


いよいよ始まるなと思いながらも、
大きな案件は久しぶりだからか
緊張してきた‥‥。


ん?


勘違いかもしれないけど、
確かに感じた視線の先にいた宮川さんと
目が合うと、すぐに逸らされてしまい、
気になりつつも仕事に戻ったが、
会議中も、終わってからも何度も
感じる視線に、さすがに居心地が悪く
働きづらかった


『皐月、今日壮琉と3人でご飯に
 行かない?』


「行きたかったけど、なんか全然
 仕事が捗らなくて残業‥‥。
 また誘って?」


雑誌掲載分や、S◯S用の文面がなかなか良い案が出ず、何度か修正しては
いるものの書いては消しての繰り返し。


『オッケー。華金なんだから、仕事も
 ほどほどに遊びなさいよ?
 お疲れ様。』


バックハグをしてきた優子に頭を
よしよしされると、パソコンの画面に
向かってもう一度文面を考えるものの
良い案が出ない


『珍しいね‥‥そこまで悩むなんて。』


酒向さん‥‥


帰宅された佐藤さんの席に腰掛けた
酒向さんが、私のパソコンの画面を
見て、途中まで作成された文面に
目を通している


この時期の服装に悩むのは、自分自身
が実際に着ていない物が多いから
よく分からないというのが本音


何が良くてメリットなのかが
分からなくて、他社の類似品を参考に
見てみたりもしているが、イメージが
掴みにくい



『明日は何か予定は入ってる?』


「‥‥どうしてですか?」


『市場調査に一緒に行かない?』


えっ?


『実際に、同じような商品を
 手に取って購入された方に話を
 聞くのも良いと思うし、どんな人が
 どうしてその服を選んだのか、
 目で見て沢山コーディネートを
 見るのも勉強だからね。
 そうすればきっとその続きが
 書けるはず。』


確かに前に制作部で生地を触ったり
鏡に合わせてみたりしてからの方が
イメージが掴みやすかった。


市場調査か‥‥。
行ってみたい‥‥‥。