『戻りました‥‥はぁ‥暑っ!!』
『濱田、お疲れ様。冷やしてこい。』
7月に入ると、本格的な蒸し暑さが
今年も始まり、マーケティングの
市場調査や外回りを終えて帰る
人達は汗だくで着替えが必須になって
いた。
給湯室に向かい、冷蔵庫から
冷やしておいたタオルを取り出し
汗を拭う濱田さんの声がここまで
届いている
外は35度でもオフィス内はクーラーが
入っている為、体調を崩しやすいのだ
真夏のスーツは本当にキツイと思う
から男性達は大変な季節。
酒向さんも今日は岐阜市の方へ
新しくできる大型ショッピングモール
の下見と打ち合わせに行っている為、
直帰しない可能性も高い
『ねぇ、そう言えば聞きたかったん
だけど、酒向さんと何かあった?』
「えっ!?‥何かって何よ‥‥。」
食堂の隅で日替わり定食を食べた後、
優子と2人で久しぶりに色々話していた
さっきまで全然違う話をしてたのに、
突拍子もないことを聞いてくるから
ビックリする‥‥‥
『ん?酒向さんと足湯に入ってた後
暫く消えたって聞いたから。』
はぁ‥‥誰に見られてたんだろ。
別にやましい事もしてないから、
見られてても偶々あった事を言えば
いいだけなんだけど、相手が酒向さん
なだけに、他部者の耳に入るのも
恐れてしまう
「散歩してただけだし、残念ながら
そういう事は何一つないから。」
こらこら、嘘でしょ‥‥
手も握ったし、肩も抱かれたじゃん。
『なんだ‥‥面白くない。
皐月に浮いた話の一つでもなんて
ぬか喜びするところだった。』
酒向さんとどうこうなんてあるわけない
じゃない。
今だって一途に1人の人を想って生きて
いるんだから、私なんかが入れる隙間
など1ミリもないよ。
部署に戻ってからも、マーケティングの
仕事をこなしていると、あっという間に
17時を迎えてしまい、肩と首が凝り
過ぎてバキバキになっていた
もう少しだけやっていこうかな‥‥。
佐藤さんも残ってるし、S◯Sの
チェックと口コミもまだ見れていない。
こういう毎日やるべき事を怠ると、
溜まりに溜まって自分を苦しめる
事になる
『お疲れ様です。戻りました。』
頭の上で手を組み大きく仰け反り伸びを
すると、突然聞こえた酒向さんの声に
慌てて姿勢を正す
『酒向主任お疲れ様です。
暑い中ご苦労様でした。
岐阜の方はどうでしたか?』
『村岡、留守の間ありがとう。
明日店舗の担当者とここで営業を
交えた打ち合わせをするよ。
それにしても暑かった‥‥』
『酒向さぁん、お帰りなさい。
冷たいタオルです、どうぞ。』
ワイシャツの袖を肘まで捲り、
ネクタイを少し緩める姿に、取り囲む
女子達がタオルやらお水やらを
渡す為に必死になっている
旅行仲のオフの酒向さんにみんな
メロメロだったからな‥‥‥。



