遣らずの雨 上

『みなさん今日は大いに楽しんで、
 くれぐれも酔い潰れないように。
 乾杯!!!』


チーム長の挨拶でグラスを合わせる音
が響き、お酒を飲む人たちは美味しそう
にグラスをカチッと合わせて飲んでいた


右隣がソワソワするものの、酒向さん
の反対側には成瀬さん達がいるから
私は目の前の食事を堪能しながら
ゆっくり味わうことにした


うう‥‥美味しい‥‥

新鮮なお刺身は臭みもないし、
海老なんてプリプリで甘味も強い


むらせに食べにいけなかったのもあるけど、体が和食を欲していたのがとても
よく分かる。


『新名は飲まないの?』


『壮琉、皐月は飲めないから。』


『あれそうだった?』


「濱田先輩注ぎますよ。
 いつもありがとうございます。」


ビール瓶を濱田さんから奪うと、
注いだビールを美味しそうに
飲み干してくれた。


「優子は?注ぐよ?」


『あたしはビールは少しでいいよ。
 日本酒の方が好きだから。』


そう言えば優子の方がお酒が強かった
のを思い出す。


私は体のこともあり全く飲めないから、
楽しそうに飲める人たちが羨ましい‥‥


あれ‥‥酒向さんのグラスが空だ。
あまり好きじゃないのかな‥‥。


歓迎会の時は飲んでいるところを
見たけれど、普段は車が多いから
お酒ってイメージが少ないかも。


話しかけるつもりはなかったけど、
ちょうどビール瓶を持っていたから
遠慮気味に酒向さんの浴衣の袖を
小さく引っ張ってみた


『ん?どうかした?』


「しっ!‥あの‥‥飲まれませんか?」


成瀬さん達に聞こえないように小声で
告げてから酒向さんのグラスに向けて
指さす私にフッといつものように
息を溢して笑うと、左手でグラスを
私の方にそっと置いてくれた。



バレないように自分のグラスに
注ぐように静かにビールを注ぐと、
また静かに右手でそれをそっと
押し戻す。


「‥‥いつもありがとうございます。」


聞こえないくらいの小さな声で
そう告げると役目を果たしたからか
お腹が減り、また美味しい食事を
ゆっくり味わった。


「優子、濱田さん大丈夫?」


『大丈夫じゃない?いつもだから。
 皐月はどうする?』


「私は先に戻るよ。
 みんなまだいるし、飲んでて?」


一時間半は食事に時間を取ってあるとは
言っていたけれど、ちょっと外の空気
を吸いたくなり散歩に行くことにした