遣らずの雨 上

『今日は休日出勤だよ。月曜日が代休。
 会社で待ち合わせしてこれから
 大阪出張。』


「営業は大変ですね‥お疲れ様です。
 頑張ってきてくださいね。」


『朝からそんなこと言ってもらえると
 俄然やる気出たわ。会社まで一緒に
 行こ。』


2人で並んでたわいもない会話を
しながら会社のエントランスに
到着すると、成瀬さんの視線が
こちらに向けられ、今になって相良さん
と来た事を後悔した


しまった‥‥。
酒向さんのことにはアンテナ張ってた
のに、普通に並んで入って来たら
睨まれて当然だ。


『じゃあね、旅行楽しんでおいで。』


「ウワッ!やめてくださいよ!」


髪の毛をクシャクシャにするように
頭を撫でた相良さんは、笑いながら
手を振り行ってしまった。



『皐月、おはよう。』


「おはよう‥‥ミスった。」


『ああ、成瀬?そんなの無視しときな。
 自分の彼氏じゃないんだから。
 行きのバス、一緒に座ろ。』


「うん、そうして。」


絶対成瀬さんと一緒に座る事は
ないけれど、万が一捕まって
問いただされたりしたら怖すぎる


『それじゃ全員集まったから、
 バスに乗ろうか。最後にお手洗い
 行きたい人は今のうちに行って
 ください。』


バスで途中休憩しながら2時間くらいで
泊まる温泉宿に到着するらしいので、
遠い場所に思えるけど意外に近いことを
知る。



15歳まで外の世界に出た事がなく、
伊勢のような近い場所でさえ初めて
なんて恥ずかしくて言い出せない


『席は余裕があるから好きなところ
 に座っていいよ。』


20名定員の観光バスに、去年の
13名乗りのミニバスとの違いを
大きく感じ、これも業績によるのかな?
と思えた


『酒向さぁん、男性の皆さん
 こっちの方でお飲み物やオツマミ
 ご用意してますのでどうぞぉ。』


やっぱり成瀬さんは流石だな‥‥。
去年はそんな事一切してなかったのに、
準備の良さに頭が下がる。


『壮琉(たける)、付き合いだから
 仕方ないけど飲み過ぎないでよ。』


優子が濱田さんの耳を引っ張り
少し低めの声を出すと、苦笑いを
出しながらも成瀬さん達が座る後ろの
方に向かって行った。


「いいの?」


『いいよ。偶にはそういうのも
 しないとさ。こんな時じゃないと
 普段話さない人と仲良く
 なれなかったりするでしょ?』


優子の言葉の裏には、信頼がないと
言えない事だなと思いつつも、完全に
優子の尻にひかれているのは感じる


そんな2人が自然体で私はとても
好きなんだけどね‥‥